ドキュメントタリー
その他

『劇画 毛沢東伝』は、藤子不二雄Aが初めて取り組んだドキュメント作品で非常に苦しんだと語っている。 しかしそこにつぎ込まれた心理描写や深い人間観察のノウハウは、『黒ベエ』『笑ゥせぇるすまん』、 ブラック短編などですでにおなじみのものだ。 ドキュメント作品は、ブラック短編などで培われた心理描写や深い人間観察が結実した作品なのである。 その後それはさらに翌昭和48年に、 『愛ぬすびと』『戯れ男』『番外社員』『喝揚丸ユスリ商会』などの劇画作品を立て続けに生み出し、 昭和49年、代表作『プロゴルファー猿』に結実されている。 また、サラリーマン世代のノスタルジーをテーマにした作品を「ノスタルジーもの」、 身辺雑記とも言える作品を「その他」として紹介する。

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<ドキュメンタリー>

劇画 毛沢東伝(げきが もうたくとうでん)−「毛沢東」改題
この作品はそれまでギャグ漫画を書いてきた藤子不二雄Aが、 資料と格闘しながら挑んだという初めての本格ドキュメント作品。 エドガー・スノーの「中国の赤い星」を読み、毛沢東には以前から関心を抱いていたという。 限られたエピソード、セリフの中で描かれた毛は、非常に思慮深く慎重である。 まさに彼ならば革命という大事業を成し遂げえたと思えてしまう。 革命という大事業を成し遂げたと信じるにたる人物像を書き出しえたことこそがこの作品の評価と成功につながっているのではないだろうか。

初出 S46.1.2日号〜5.1日号
実業之日本社 漫画サンデー 連載
単行本 S46.12.1 実業之日本社
全1巻
H2.5.31 徳間書店 『毛沢東の長征 中華人民共和国の青春』 全1巻

劇画毛沢東伝・革命への長征(げきがもうたくとうでん かくめいへのちょうせい)
毛沢東の死去後に描かれたダイジェスト版。

初出 S51.10.8日号 朝日新聞社 週刊朝日 読切
単行本 未収録


冷血の記録<三光>(れいけつのきろくさんこう)
大平洋戦争、中国の戦場における人間の狂気を鋭く描いた作品。 三光作戦とは、殺しつくす、略いつくす、焼つくすという作戦のこと。 しかし本作品の内容はその告発ではなく、戦争という極限状態の中で我を見失っていく人間の哀れさに主眼が置かれており、 ドキュメント作品というよりはブラック短編に近い作品である。

初出 S46.2.24日号 少年画報社 ヤングコミック 「殺光」
S46.3.10日号 少年画報社 ヤングコミック 「略光」
S46.3.24日号 少年画報社 ヤングコミック 「焼光」
単行本 未収録


劇画・私の履歴書 負けてたまるか松平康隆(まけてたまるかまつだいらやすたか)
「科学的人間管理術」で、日本の男子バレーボールをミュンヘンオリンピック金メダルに導いた名監督松平康隆氏の伝記。 タイトルの「負けてたまるか」は欧州遠征で現地の新聞に「世界のスターと世界のクズ」と、 東洋の魔女と言われた日本の女子バレーと比較され一念発起するきっかけとなった松平氏の心情から。 『劇画 毛沢東伝』の1年後に書かれた作品。 『劇画 毛沢東伝』にくらべ33頁と少ないながら、名将松平氏の軌跡を十二分に描き出しており遜色ない。

初出 S47.2月号 講談社 月刊現代 読切/33頁
単行本 未収録


プロジェクトPOS ある事業部の挑戦(ぷろじぇくとぴーおーえす)−「POS バイシクルに賭けたロマン!!」改題
ナショナル自転車事業部における画期的な直接注文システムPOS(パナソニック・オーダー・システム)の開発、導入、成功までの物語。 当時流行していたビジネス漫画の一つとして書かれた作品らしいが、凡庸なハウトゥー本ではない。 本編の核は新事業部長小本充氏が部下を心を動かし、工場全体を巻き込んで行く様を描いた人間ドラマである。 プロジェクトを進めていくための一つ一つの決断にドラマがあり、ぐいぐいと読み進めさせられる。

初出 S63.3.29日号〜S63.6.25日号
産經新聞社 夕刊フジ東日本版 連載
単行本 H1.5.25 中央公論社 中公漫画叢書 全1巻


サドンデス(さどんです)
サドンデスとは、勝つか負けるかの最終勝負のこと。結果が全ての世界において勝敗が彼らの人生を決める。 だから負けても勝ってもそこにドラマが生まれる。 プロゴルファー猿によく言葉が引用された帝王ジャック・ニクラウスを初め、 ジャンボ尾崎、青木功など国内外の15人のスーパープレイヤーたちの人生を決したプレイの一瞬を描いている。 なお、シナリオはゴルフライターの中川一省氏に協力を仰いでおり、 また単行本の巻末には藤子不二雄Aと青木功の対談がある。

初出 H3.3月号〜H4.4.22日号
集英社 スーパージャンプ 連載/8頁/4色
単行本 H4.5.13 集英社 スーパージャンプコミックスデラックス 全1巻


<ノスタルジー>

夢トンネル(ゆめとんねる)
いつも夢をみている小学生ユメオくんは、不思議な力を持つコアラみたいなウィンキーと知り合う。 ウィンキーの力でユメオくんはお父さんの子供時代へ旅をし、お父さんの子供時代を体験する。 ユメオくんはそこでお父さんの子供時代の友達と仲よくなったり、 漫画家になりたがっていたお父さんを知ったりする。 掲載紙の読者であったサラリーマンのお父さんたちにユメオくんを通して彼らの子供時代を今に蘇らせ、 心休ませるノスタルジックストーリー。

初出 S58.5.12日号〜S59.5.5日号 産經新聞社 産經新聞 連載/1頁/全301話
単行本 未収録


タカモリが走る(たかもりがはしる)
犬の視点という変わった視点で書かれた作品。主人公の犬であるタカモリは、「西郷和義」くんのペット。 うっかり床の間の掛け軸で爪を研いでしまって優しいお母さんを怒らせる大失敗をしたり、 自由だと思っていたノラ犬の厳しい生活を見て驚いたりさまざま体験をする。 たまには漫画家である和義のお父さんのネタとして役立ったりして、タカモリは少しずつ成長していく。 主人公のタカモリは藤子不二雄Aのペット、和義くんのお父さんはご自身がモデルではないだろうか。 淡々とした作風でどことなく郷愁を感じさせる作品である。

初出 S63.8.26日発行〜H3.2.3日発行
中央公論社 藤子不二雄ランド 連載
単行本 H2.7.5 中央公論社 F.F.ランド・スペシャル 全2巻


<その他>

トキワ荘物語(ときわそうものがたり)
トキワ荘入居、手塚先生への陣中見舞い、鈴木伸一氏の歓迎会、石ノ森章太郎と赤塚コンビの仕事ぶり、 睡魔との闘い、石森章太郎の薄幸な姉との一瞬の出会い、テラさんを囲んだ楽しいひととき。短編ながらも、 ここに藤子不二雄Aの青春が見事に凝縮されている。

初出 S44.12月号
虫プロ商事 COM 読切
単行本 S53.5.1 翠楊社 グランドコミックス 『トキワ荘物語』手塚治虫 他13人 全1巻
S62.6.10 蝸牛社 手塚治虫&13人『トキワ荘青春物語』 全1巻
H7.12.15 蝸牛社 手塚治虫&13人『トキワ荘青春物語』 全1巻


ワールド漂流記(わーるどひょうりゅうき)
アニメーター「素野安彦」青年は28才。アメリカ西部のパームスプリングスでゴルフをし、 サウスダコタで馬蹄投げ、中国の湖南省で毛沢東に思いに馳せ、 オーストラリアのエアーズ・ロックでアポリジニーの神を見る。 そこには日本では体験できない素晴らしい世界がある。 藤子不二雄Aの旅行体験が元になっていると思われる作品だ。

初出 H5.7.17日号〜H7.5月号
小学館 ビッグゴールド シリーズ連載
単行本 H7.8.20 小学館 ビッグゴールドコミックス 全1巻


制作・協力<すばる

川路 康裕 (Yasuhiro Kawaji) info@ffgallery.com

新規掲載日-1998.05.03- 最終更新日-1998.05.03-

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